

この記事は次のような人におすすめ!
・IPOの銘柄抽選に外れたけどセカンダリーで興味がある。
・IPOセカンダリー投資のブログを探している。
・初値買いなどIPOセカンダリーの買い方について調べている。
IPO(新規株式公開)は、企業が初めて株式を公開市場に上場するプロセスであり、IPO投資とはその企業の公開価格で投資することを指します。統計上、初値が公開価格を上回る可能性が高く、多くの投資家が短期でもリターンを得やすい投資となっております。
非常に人気が高い投資となっているため、各証券会社ではブックビルディング制度(抽選制度)を設けており、それに当選した投資家のみが公開価格で買付できる権利を得ることができます。

筆者が証券会社にいたころは、1回のブックビルディングで約1兆円近い金額の申込があったと記憶しています。当たったら超ラッキーです。
特に人気がある銘柄は競争率が高く、抽選も熾烈を極めます。
しかし、投資の世界に絶対は存在せず、IPO株への投資でも*公募割れ(公開価格割れ)のリスクが伴います。
そこで、IPO株が市場に出た後に取引されるIPOセカンダリーが注目されています。本記事では、IPOセカンダリーをおすすめする理由を解説します。
*公募割れ:上場時の初値が公開価格を下回ること
初期リスクの軽減
IPO株の不確実性
IPO投資は、一般的に投資家にとって魅力的なチャンスとされますが、それは同時に高いリスクを伴うものでもあります。新規上場直後、初値が付いた後の株価は激しい変動を見せることが多く、企業の将来性や市場の反応が不確実なため、IPO直後に投資することはリスクが高いと言えます。IPO価格が高すぎる、または市場の期待に応えられない企業も多く、株価が急落するケースもあります。
セカンダリー投資の安定性
一方で、IPOセカンダリー投資では、初値が付いた後に株価が市場でしばらく取引され、初期の不確実性や*ボラティリティが和らいだ後に投資することができます。企業の業績や市場での評価がある程度固まってくるため、投資家はより安定した状況で判断を下せます。つまり、IPO投資のリスクを軽減しつつ、成長ポテンシャルを享受できるのです。
*ボラティリティ:商品の価格変動の大きさ
IPOセカンダリーの実例
9434ソフトバンクのIPOを例に挙げると、1,500円の公開価格に対して、上場初値は1,463円という結果となり、期待に反して株価が低迷しましたが、数カ月後に反発しその後の成長が顕著になりました。初値買いを含むセカンダリー投資を選んだ投資家は、年間約6%の株式配当を受け取りながら、初期の不安定な動きを避けつつ、大きな成長を捉えることができました。
9月12日現在、株価は2,000円を超えています。

9434ソフトバンクの株価チャート 2024年9月12日 SBI証券より抜粋
企業の業績や財務状況を確認できる
IPO前の情報不足
IPOに参加する際、投資家が入手できる情報は限られており、企業の将来性を完全に予測するのは困難です。特に、成長企業やテクノロジー企業の場合、将来的な利益を見越した上場が多く、上場時点での利益が安定していないことがしばしばあります。また、IPOに関わるマーケティング資料やロードショーでの情報は、一般投資家がアクセスできるものに限りがあるため、投資判断が難しい状況が多々あります。
業績の安定を確認できるIPOセカンダリー
IPOセカンダリーでは、上場後に企業の四半期決算が公開されるため、企業の財務状況や実際の業績を確認することができます。これにより、投資家はより正確な判断を下すことが可能になります。特にグロース企業の場合、初期段階で期待されていた成長が実現できるかどうかを評価できるため、投資リスクが大幅に低減します。
ファンダメンタル分析の活用
上場後に入手できる財務諸表や業績レポートを基に、ファンダメンタル分析を行い、企業の収益性や成長ポテンシャルを評価することが可能です。この分析を元に投資を決定することで、IPO投資に比べてより堅実な投資が実現できます。

しっかりとファンダメンタルズ分析を行うことで、長期的な視野で企業の成長に合わせた値上がり益を狙うことが可能になります。
特にロング投資家と言われるプロ投資家達は3~5年の目線、場合によては10年以上の超長期の目線で投資を行うこともあります。
過去、べ〇リー・ギ〇ォード社が運用するファンドでは、15年以上銘柄を保有しているなんて事例もありました!
市場動向を見極めた投資判断が可能
IPOの市場心理と過大評価
IPO直後の市場は、しばしば過熱状態になります。投資家の期待が高まり、株価が実際の企業価値以上に上昇することがあります。このような状況下で投資を行うと、企業の実力以上に高値で購入してしまい、その後の株価調整によって損失を被るリスクがあります。特に、テクノロジー分野などの急成長を期待される企業では、この現象が顕著です。
セカンダリー市場での市場動向の確認
IPOセカンダリーでは、IPO直後の市場の過熱感や誇大評価が収まり、株価がより現実的な水準に落ち着いたタイミングで投資を行うことができます。市場全体の動向や特定の業界に対する投資家の反応を観察することで、より冷静かつ客観的な投資判断が可能になります。
ロックアップ解除後の投資機会
IPO後のロックアップ期間
多くのIPOには内部関係者や早期投資家が株式を売却できない「ロックアップ期間」が設けられています通常、この期間は90日~180日程度ですが、ロックアップ解除後には、ベンチャーキャピタル等の大株主が保有する大量の株式が市場に放出される可能性があり、株価が下落するリスクが高まります。
ロックアップ解除後の動きを見据えた投資
IPOセカンダリーでは、ロックアップ解除後の株価動向を見極めて投資することができます。ロックアップ解除後に株価が一時的に下落する場合でも、企業の長期的な成長見通しが良好であれば、そのタイミングで割安な価格で購入することが可能です。ロックアップ解除後の市場の反応を観察し、過剰な売り圧力が解消された後に投資を行うことで、より有利な投資機会を見つけることができます。
例:Sansan社のIPO後の動向
デジタル名刺サービスを手掛けるSansan社は、上場後にロックアップ解除を迎えた際、上場時初値より株価が下落しました。しかし、長期的な成長を期待する投資家にとっては、割安な株価での購入機会となりました。

4443Sansanの株価チャート 2024年9月12日 SBI証券より抜粋
ポートフォリオの多様化
IPO株の特徴
IPO銘柄は、新興企業や成長性の高い企業が多く、これらの企業は通常、高リスク・高リターンの特徴を持っています。そのため、投資ポートフォリオにIPO株を組み込むことは、リスク分散の一環として有効です。しかし、IPO投資自体は非常に不確実な要素が多く、初期投資で大きな損失を被る可能性もあります。
セカンダリー市場でのバランス調整
IPOセカンダリーは、リスクとリターンのバランスを取りながらポートフォリオの多様化を図る手段として有効です。既に上場している株式をポートフォリオに追加することで、初期リスクを軽減しつつ、成長株にアクセスすることができます。また、IPOセカンダリー投資は、特定のセクターや市場トレンドを反映した株式を選びやすく、ポートフォリオの戦略的な多様化が可能です。
おわりに
IPOセカンダリーは、IPO直後の不安定な市場動向や初期リスクを避けつつ、企業の成長ポテンシャルに参加するための有力な戦略です。企業の業績や市場の反応を見極めた投資判断が可能であり、リスクを抑えた安定的なリターンが期待できます。
仮にIPOに直接参加することが難しい個人投資家にとっても、セカンダリー市場は魅力的な投資機会を提供すると考えます。ポートフォリオの多様化やリスク管理を図りつつ、長期的な視点で成長企業に投資することが、おのずと成功への鍵となるでしょう。