
日本のグロース企業は、成長のポテンシャルが高い一方で、その性質から機関投資家に空売りのターゲットとされることが多くあります。グロース企業は急速に成長している一方で、まだ利益を安定して生み出していないことが多く、この特性が機関投資家に狙われる要因となっています。本記事では、前半に「なぜグロース企業が機関投資家に空売りされやすいのか?」、後半では「グロース企業が取るべき対策」について詳しく解説します。
グロース企業とは?
まず、グロース企業の基本的な定義を確認しましょう。グロース企業とは、急速な成長が期待される企業のことを指します。これらの企業は、日本だとグロース市場に上場しており、技術革新や新しいビジネスモデルを活用して、市場に急激にシェアを拡大しようとしています。特に、初期段階では利益よりも売上やユーザーベースの拡大に注力するため、利益率が低く、収益が安定していないことが一般的です。
この成長のポテンシャルが高いため、株式市場では将来の業績に対する期待が大きくなり、株価が高く評価されることが多いです。しかし、これと同時に機関投資家による空売りのターゲットにもなりやすいというデメリットが存在します。

これはマジレスさせてもらうと、最近のグロース市場は、時価総額30億以下の企業でも、機関投資家は平気で空売り仕掛けてきます。
しかも、個人投資家は空売りできないことが多いです。
これじゃあ、はっきり言って個人の買いも養分になるだけですよ!!
政治関係者の皆さん、我が国が本気でグロース企業を育てたいと思うなら、抜本的な制度改革が必要です。(すみません。熱くなりました。)
なぜ機関投資家がグロース企業を空売りで狙うのか?
では、なぜ機関投資家が日本のグロース企業を空売りで狙うのでしょうか?その理由は複数ありますが、主に以下の要因が関係しています。
バリュエーション(株価の評価)が高すぎると見なされる
グロース企業の株価は、将来の成長を織り込んで非常に高く評価されていることが多いです。特に、成長段階にある企業は、現在の業績に比べて株価が高騰しやすい傾向があります。機関投資家は、こうした状況を過剰なバリュエーションと見なし、「この企業は成長が期待されているが、実際の業績が追いついていない」と判断します。
この場合、機関投資家はグロース企業の株価が将来的に下落する可能性が高いと見込み、空売りを仕掛けます。特に、短期間で株価が急騰した企業は「過熱」と見なされ、空売りの対象となりやすいです。
利益の不安定さと外的要因への脆弱性
グロース企業は成長途上にあるため、利益が安定しておらず、外的要因に大きく影響されやすいです。例えば、法令規制の変更や市場の需要変化、競合の動きなどがグロース企業にとって大きなリスク要因となります。この不安定さは、株価が急落するリスクを伴うため、空売りを仕掛ける絶好のチャンスとして機関投資家に狙われることがあるのです。
さらに、グロース企業は成長に資金を多く投じるため、キャッシュフローが安定していないことが多いです。新たな資金調達が必要な場合、株価の下落は企業の資金調達コストを引き上げ、結果的に企業成長にブレーキがかかります。この悪循環を見越して、機関投資家は空売りを行うことがあるのです。
市場心理を利用して株価を下落させる戦略
機関投資家は、マーケットセンチメント(市場心理)を読み、投資行動に反映させます。グロース企業は、新興市場やテクノロジー分野に多く存在し、市場全体のニュースやネガティブな報道に非常に敏感です。たとえば、業界全体の成長見通しが下方修正された場合や、個別企業の業績が期待に反して振るわなかった場合、株価が急落することがあります。
機関投資家は、こうした市場の不安感や悪材料に対する過剰反応を見越して、空売りを行うことがあります。つまり、彼らは市場の恐怖心や不安感を利用して利益を得る戦略を取るのです。

反対にイケイケ上昇している銘柄を買った瞬間に、株価が急落!!
なんて経験ありませんか??自分では良いタイミングで買っていると思っていても、実は機関投資家に買わされているのです。
本当のエントリーのタイミングは急騰前です。彼らはそのタイミングから作戦を立てています。
株価操作のリスク
一部の機関投資家は、株価の下落を促すために意図的に空売りを仕掛けることがあります。これを「株価操作」と呼びますが、グロース企業は株価の変動が激しいため、株価操作が行われやすい対象となりがちです。大量の空売りを仕掛けることで、他の投資家がパニック売りを始め、結果的に株価が急落することを狙うのです。
このような手法は、企業の価値に対する信頼を損なわせ、結果として企業自体に深刻な「損」を与える可能性があります。特に、株価の急落は企業の信用度に直結し、将来的な資金調達やビジネス拡大の妨げとなることがあります。
空売りがもたらす損失と企業への影響
空売りは、企業にとってさまざまな形で「損」をもたらす可能性があります。特に、グロース企業の場合、空売りによる株価下落は以下のような深刻な影響を与えることがあります。
株価の急落による資金調達コストの上昇
グロース企業は成長のために資金調達を必要とすることが多いです。株価が高ければ、株式発行による資金調達が容易になりますが、空売りによって株価が下落すると、資金調達コストが大幅に上昇します。これにより、企業は成長戦略を実行するための資金を確保するのが難しくなり、最悪の場合、成長のペースが鈍化する可能性があります。
企業価値と信頼性の低下
株価の急落は、企業の市場価値を直接的に損ないます。市場では株価=時価総額がその企業の価値を表す指標の一つとされているため、株価が下がると企業自体の信頼性が低下します。特に、グロース企業の場合、株価が大きく下落すると、将来に対する成長期待が薄れるため、投資家やパートナー企業からの信頼が損なわれる可能性が高まります。
パニック売りによる連鎖的な下落
空売りが引き金となり、株価が下落すると、個人投資家がさらに株を売るケースがあります。この連鎖的な売りが発生すると、株価は一層急落し、企業に対するダメージが拡大します。特に、グロース企業は元々株価の変動が大きいため、パニック売りによって一気に大幅な株価下落が起こりやすいです。

特に個人投資家の信用取引でグロースを買っている場合は、マジで相場の急変動演出で、機関投資家に食い物にされるケースが多いので気を付けけてください。
パニックが終わって、そっと買い戻されるのが関の山です。
相場の急落を乗り切るには、現物で保有することが一番です。
グロース企業が取るべき対策
グロース企業は、空売りのリスクに対抗するためにいくつかの戦略を講じることができます。
空売りのリスクに企業がしっかりと対応しているか、否かをチェックすることで、株価をしっかりと意識している企業なのかを判断することができます。これは、グロース銘柄選定の上で非常に重要なポイントです。
透明性の向上と情報開示の強化
グロース企業は、透明な情報開示を行うことで市場からの信頼を築くことが重要です。業績報告や経営戦略に関する情報を定期的に発信し、投資家に対して企業の成長ビジョンや実績を明確に伝えることで、機関投資家のネガティブな投資行動を抑制できます。
事業拡大へ向けた資本政策
グロース企業の場合、将来の事業拡大へ向けて、更なる資金調達は必要不可欠です。公募増資の場合、株価や出来高などいくつかの要件が重ならないと実施が難しいため、本業でシナジーが期待できる企業への第三者割当増資をおすすめします。また、オンラインや対面での投資家向けの説明会を頻繁に開催することで、ファンを増やすことも重要です。これにより、長期保有目的のホルダーが増えるため、空売りによる一時的な株価下落を抑え、企業価値を守ることができます。

しっかりと株価形成を行いたい上場企業のオーナーに伝えたいのは、自身が保有している株を貸株で出さないでほしい・・・。
もう個人投資家にとっては、そこは当たり前に見る時代ですよ。
結論
- グロース企業は急成長を期待されるが、利益が安定しないため空売りのターゲットになりやすい。
- 主な空売りの理由は、バリュエーションの過剰、利益の不安定さ、市場心理への敏感さ。
- 空売りによって株価が下落し、企業の資金調達コストが上昇し、成長が阻害されるリスクがある。
- 機関投資家による株価操作やパニック売りが企業に大きな影響を与える可能性がある。
- 対策として、グロース企業は透明な情報開示と信頼の向上が重要。
- 資本政策を工夫し、長期保有の投資家を増やすことで空売りの影響を軽減できる。
- 上場企業のオーナーは、保有株を貸株に出さないことが企業価値の保護に繋がる。

